鋼板と錆び

鉄は酸性の環境で錆び、アルカリ性では錆びません。鉄筋コンクリート中の鉄筋は、コンクリートの強アルカリ成分により守られていて、さびることはありません。 ただし、コンクリートは、⻑年空気にさらされると大気中の二酸化炭素の影響で中性化が進み、ついには鉄筋が錆び、爆裂を起こします。
ハイブリッド地下室で使用する鋼製型枠も、打込まれたコンクリートがアルカリ性を保つ間はさびる心配はありません。 ところが一旦コンクリートが中性化すると鋼板が錆びて、ついには穴が開く恐れが生じます。

それでは鋼製型枠に打ち込まれたコンクリートが中性化するスピードはどの程度でしょうか。 表面に鋼板が密着しているコンクリートは大気中の二酸化炭素の影響は受けませんので、 中性化はほとんど進まず、その結果、少なくても50年は鋼板がさびて穴が開き漏水するといった心配はないと考えられます。 その根拠として、50年以上実際に供用されてきた地下鉄トンネルのコンクリートの中性化スピードに関する論文を上げることができます。

ネット上に公開されている「地下鉄トンネルのコンクリートの中性化速度に関する一考察」によれば、 80年間、55年間、40年間実際に供用されてきた地下鉄トンネルのコンクリートの中性化を調べた結果、 トンネルの外側のアスファルトで防水された面は大気中の二酸化炭素の影響を受けないのでコンクリートの中性化はほとんど進んでおらず、 その中性化する深さは50年でせいぜい10㎜であることが確認されています。一方大気にさらされているトンネルの内側は 50年で30㎜以上を示しているとしています。

出典: 論文 地下鉄トンネルのコンクリートの中性化速度に関する一考察(岩波 基ほか コンクリート工学年次論文集Vol.39,No2,2017)

また直接土に埋められた鉄のさびについては(社)鋼材倶楽部⼟⽊専⾨委員⻑の論⽂がネット上に掲載されています。 その論⽂によれば、地中に埋められた鉄の腐⾷スピードは0.01mm/年程度であるとの事ですので、 ハイブリッド地下室で使⽤する鋼板厚3.2mmで320年、4.5mmで450年、6.0mmで600年と計算されます。 両⾯から腐⾷するとしてもその半分の耐久性はあると⾒込めるでしょう。

⼟の中の鉄は錆びるのか?

⼟中の鋼構造物の寿命は鋼材の腐⾷によって決定される。 この腐⾷量は使⽤場所の環境によって異なるが (⼟質および地下⽔質) ⼤体0.01mm/年程度である。試験⽅法は全国10か所に試験杭群を設置し, 2年, 5年, 10年後に引き抜き腐⾷量を測定した。測定結果は場所により多少の差はあるが, 腐⾷率0. 01mm/年を⾒れば⼗分であることが判明した。
出典:鉄とさび 堀武男 ⼟⽊学会論⽂集第349号